第3回 ハワイ不動産投資編

Know-how for the salaried worker

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こんにちは。サラリーマンと不動産投資家の両立を目指す早杉富士夫です。

このシリーズも第三回を迎えますが、これまで二回は、私の国内不動産投資に関する話に終始し、海外不動産投資に興味をもたれている読者の皆さんにとっては退屈な内容だったかもしれません。

私の不動産投資ポートフォリオ原則である①インカムゲイン、②キャピタルゲイン、③タックスコントロールを実践すべく、ここからは私が経験した海外不動産投資について触れていきたいと思います。

最初に皆さんにお伝えしますが、「海外不動産投資はやってみないと本当のことはわからない。国・地域によって法制度・商慣習・税務などが異なり、さらに言葉の壁も重なって、予期せぬ問題に臆せず立ち向かう忍耐と根性が求められる」というのが私の正直な感想です。最近は海外不動産に関する書籍やブログに経験者の苦労話が掲載されていますが、私自身にも購入前・購入後において次から次へと難題が降ってきました。後でわかると「なんだ。そういうことだったのか。」と拍子抜けすることも多いのですが、多忙なサラリーマンが突然のメールや郵便物の内容に驚きや不安を持ち、その都度貴重な時間を費消させられました。

私は、2012年千葉市のマンション購入後、次は海外不動産に投資することを決め、私のメンターや友人が既に投資していたニューヨーク、ロサンゼルス、クアラルンプールなどを候補に、物件情報の収集を始めました。当時は歴史的な円高局面が続いており、まだアベノミクスが発表される前でしたが、過去のサイクルからみてそろそろ反転するのではないかとの予感があり、この絶好の買い場を逃したくない気持ちを持っていました。

実際に2011年春にニューヨーク、2012年春にクアラルンプールを下見していましたが、当時はまだ「買うぞ」という覚悟ができていませんでした。しかし、中古の1棟マンションを取得したことで少し自信が持て、2012年秋に家族でハワイ旅行が持ち上がったことを契機に、最初の海外不動産はハワイにしようと決めました。

早速、インターネットで不動産情報を収集したところ、銀行時代にその名前を知っていた会社がハワイで不動産仲介事業をやっていることがわかり、その会社の東京本社に相談に行きました。先方のアドバイザーは直前までハワイ支社にいた方で、私の希望を伝えたところ、いくつか候補物件を紹介してくれました。ハワイに到着し、バカンスを楽しんだ後で、ワイキキの中心部にある新築のホテルコンド、中古のコンドミニアム、アラモアナショッピングセンターに近い再開発地区の高級コンドミニアムなどを見て回りました。

私はその中でワイキキのリゾートホテルが立ち並ぶ一角にある古いホテルコンドが気に入り、低層階の海側の一室を購入することにしました。この部屋はベランダ越しにホテルのガーデンがあってその先にヨットハーバーが見える立地で、キッチン、冷蔵庫、食器類、ツインベッド、ソファベッドなどが整っており、大人4名が長期間滞在することができる仕様になっています。

このホテルは昔日系企業が所有していたこともあるのですが、その後所有者が転々とし、リーマンショック後は銀行管理下に置かれ、1部屋単位で売却、債権回収に充てている物件でした。このホテルの特徴は、米国で知名度が高く、立地も抜群に良く、築50年経過しているものの、大規模修繕が施され、ホテルとして十分な設備や機能を有していることでした。また賃貸条件も定額制と変動制の選択が可能で安定した賃料が得られること、家族でハワイに遊びに来た時に宿泊できる特典があることなど、一般的なコンドミニアムに比べ、メリットが多いと感じました。

逆にデメリットはハワイの海が見える物件に共通することですが、固定資産税、管理費用が高く、ネットのキャッシュフローは自己資金:バンクローン=5:5くらいでは手残りがほとんどなく、インカムゲインの目的には向いていないことです。

それでも私が最も魅力に感じたことは、物件価格の9割を建物価格とみなすことができ、かつ築年数がホテルの法定耐用年数を超過しているため、7年の定率償却が可能となり、給与所得と合算した場合個人の課税所得を多額の減価償却費により大幅に減少させることができることです。もちろん、将来売却した場合その分長期譲渡所得が膨らむことになりますが、税金還付分を考慮したキャッシュフローベースでは相応の手残りが期待できます。

その他、ハワイの不動産取得にあたって留意する点をまとめると次のようになります。

  1. 初期費用
    銀行審査費用、現況確認検査費用、所有権登録・所有権保険など一般に物件価格の1.8%程度が初期費用としてかかります。
  2. 銀行借入
    現地銀行にもよりますが、購入金額の70%まで融資してくれます。
    融資期間は30年、元利金等返済、金利は全期間固定から1年変動金利まで選択できます。最初にローン金額に応じて前払いすると金利が安くなりますが、それでも3.5%~4.5%と日本よりかなり高くなります。
    融資申し込みからクロージング(引渡し)までは、大体45日から60日くらいかかります。
    物件によって銀行の総融資額の上限が定められているため、ローン申請が多いと承認されない場合があります。
  3. 仲介手数料
    日本と異なり、売り手から仲介手数料を徴するルールのため、購入時はかかりません。売却時は物件価格の6%程度を仲介手数料として見込んでおく必要があります。
  4. 固定資産税
    ハワイの海が見える部屋は一般に固定資産税が高く、しかも固定資産税評価額が毎年大きく変動します。私の場合、購入時の固定資産税から現在はなんと75%値上がりしています。評価額が上がるのはうれしいのですが、金利上昇も相まって当初の想定よりもキャッシュフローが大きく目減りしてしまいました。
    なお、同じ物件でも海側と山側では固定資産税が評価額に比例して大きく異なるため、海が見えるか否かで最終的なネット利回りに大きな差が生じます。
  5. 管理費用
    ホテルの場合はオペレーション費用がチャージされるほか、別途管理会社に一定の管理手数料を支払う必要があります。(管理費月100ドル~200ドル程度)
  6. エスクロー口座
    日本と異なり、主に固定資産税支払いのための信託口座(エスクロ―アカウント)、修繕費等運転資金のための信託口座が設定されます。銀行普通預金口座とあわせて3つの口座を資金が行き来します。私は最初資金の流れがよく理解できませんでした。
  7. 税務申告
    米国では必ず税務申告を行ってください。歳入庁(IRS)から納税者番号が割当てられ、年一回会計士を通じて申告する必要があります。私は管理会社の嘱託会計士を利用しています。(委託手数料年間300~500ドル程度)
    経理処理は日本とよく似ていますが、減価償却年数が築年数にかかわらず取得後一律27.5年と定められているので、税務上の損益は日本と大きく異なります。
  8. 売却時費用
    日本での税務申告の他に、現地でのキャピタルゲイン税約20%(長期・所有1年以上)、不動産会社への仲介手数料(物件価格の約6%)、エスクロー費用等諸費用1%程度、ハワイ譲渡税(価格により異なります)売却価格の0.015%~0.125%、ハワイ州源泉税(非居住者対象)売却価格の5%、連邦源泉税(外国人対象)売却価格の10%等、様々な税金・経費が生じますので、手取り金額の計算に留意が必要です。

初めてハワイの不動産購入を検討する方には、以下のURLを参考にされると良いでしょう。このサイトは物件の情報を詳細に確認でき、所有者、売買金額の過去の履歴、固定資産税の推移、納付状況などが公開されています。私の所有不動産も物件番号を入力することで固定資産評価額や固定資産税、売買履歴などを確認することができます。

http://www.qpublic.net/hi/honolulu/

後日談ですが、この後山側の高層階の部屋が3フロア一斉にフルリノベーションされ売り出されたので、私は同タイプの部屋一戸を追加購入しました。こちらは山側のため定額賃料の割に購入価格や固定資産税が低く、最終的なネット利回りは海側の最初の物件よりも高い水準を維持しています。

現在、オアフ島は、ワイキキ地区だけでなく、カカアコ地区、アラモアナ地区でも大規模開発が進んでおり、今後新築コンドミニアムの供給が大幅に増える見通しです。需要が追いつかない場合は不動産価格が下落する心配もありますが、実際に購入してみると、気候温暖なリゾート地ハワイにいつでも泊まれるホテルの部屋を所有していることの精神的な満足感は大きく、そこが他の地域にはないハワイ不動産の魅力ではないでしょうか。また海外不動産の手始めとして、日本とは異なる法規制や契約内容において日本人のアドバイザーや銀行員が現地で親切にサポートしてくれる安心感はハワイならではと言えるでしょう。もちろん、タックスコントロールという観点でも、この投資は私の不動産ポートフォリオ戦略に適ったものであり、十分なリターンをもたらしています。