第6回 マレーシア新築コンドミニアム購入・後編

Know-how for the salaried worker

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皆さん、こんにちは。サラリーマンと不動産投資家の両立を目指す早杉富士夫です。
第6回では、前回に引き続いて、実際に私がマレーシアの物件を購入する際に体験した、物件購入までの手続きとトラブルについてお話したいと思います。

安泰に進んだ購入手続き

第5回では、三度のクアラルンプール視察を経た後に、ブキットビンタン近郊のコンドミニアム購入を決意したところまでお話しました。
今回は購入にあたって実際に体験したトラブルと皆様に留意していただきたい点についてお話したいと思います。

購入申込書に署名し、手付金をクレジットカードで支払った後、すぐにHSBCに行き、ローンの申し込みをしました。
事前にローン申込の意向を伝えており、預金口座も開設済で一定額の預金を預けていたので、ローンオフィサーからは販売価格の85%まで融資可能との仮承認をすぐに得ることができました。

2か月後に再度正式契約のためクアラルンプールを訪問し、HSBCの支店で弁護士との間で売買契約書、銀行ローン契約の締結、残りの手付金の支払いなどの手続きを行った後、デベロッパーの事務所に行き、最終的な売買価格の確定のための交渉を行いました。

すでに契約を締結しているので、ここから更なる価格の引き下げ交渉など可能なのか疑問に感じましたが、不動産仲介会社の中華系の担当者が事前に交渉してきたので手ごたえはあると言っていました。
実際会ってみると先方販売責任者から割引率を倍近くに上げる旨の回答を得ました。
不思議な感覚でしたが、どうやらこの仲介会社が他の顧客のための交渉の中で大幅な割引を引き出し、その条件を私にも適用するよう交渉してきたようです。
日本ではありえない話ですが、マレーシアならではかもしれません。日系の不動産仲介会社ならこのような交渉は想像すらしないと思いますが、本当にこの中華系の担当者の交渉術には感心しました。

このようなケースは珍しいことと思いますが、キャンセル物件などで売り手サイドに何か事情がありそうな場合には現地不動産会社を利用して価格交渉してみるのも一考かと思います。
この追加割引によって私の購入価格はローン借入額を下回ってしまうオーバーローンの状態になってしまいました。

  • ブキットビンタンのコンドミニアム

工事の遅れと突然始まったローン返済

初の新興国物件購入としてここまでは非常に恵まれた状況が続いたのですが、この後工事が予定より全体的に遅れ、当初の完成引渡し時期より1年程度遅れるとの連絡がありました。

ところが、物件の引き渡しが済んでいないのに、HSBCから突然ローンの返済開始の知らせが届き、毎月元金と利息が口座から引き落とされる事態となりました。
契約では引渡しまでは元金の返済は行わず、利息もすべてデベロッパー持ちになっていたので、急ぎクレームを入れ、私のメンターにも事情を伝えました。
私のメンターはそのような事態になっておらず、私だけが突然返済開始に入ってしまったようです。

原因を調査したところ、HSBCのローンオフィサーから連絡があり、デバロッパーの担当者から聞いていた物件の完成予定時期をもとに利息のデベロッパー宛請求時期を決定していて、引渡しの大幅な遅延をその時点で想定していなかったことが理由とのことでした。なぜ私だけがと疑いつつも、とにかく早くデベロッパーから利息分を返戻してもらう必要があるので、メンターにも協力を仰ぎ、デベロッパーに抗議メールを送り続けた結果、ようやく3か月分の利息分を返戻してもらいました。
元本返済猶予についてはHSBCのテクニカルな理由で難しいということでそのまま毎月返済を続けることになりました。

度重なるトラブルの対応に追われた数ヶ月

こうなった以上、一刻も早く物件の引き渡し、家賃の受取を開始する必要がありましたので、不動産仲介業者の担当者に鍵の受取、内装等仕上げの検査を依頼しました。
しかし、またもやここで問題が発生。室内の仕上がり具合を仲介業者の担当者が確認したところ、30以上の要補修箇所が見つかり、やり直しの工事が必要とのことでした。

すぐにデベロッパー側にやり直しを依頼しましたが、仲介業者からもデベロッパーからも補修が終了したか否かの連絡がないまま、1か月程度が経過し、督促すると、なかなか指摘箇所すべての補修が終わらず、いつ終わるかわからないとの回答でした。
さすがにこのまま放置してはまずいと思い、長期滞在ビザ(MM2H)を取得するタイミングにあわせて、2014年5月のGWにクアラルンプールを再訪し、直接補修箇所を確認のうえ、デベロッパーの責任者を呼んで工事業者にすぐに対応するよう命じるよう強く要求しました。

さすがにこの時はデベロッパー側もすぐさま内装業者を手配し当方の面前で補修作業を行わせました。
そして、翌6月から家賃が入るようデベロッパー側とテナント契約を締結しました。
初の新興国投資案件でしたが、予想外にいろいろなトラブルに巻き込まれ、日本とは異なる仕事のスタイル、契約様式もあって本当に疲れました。

皆さんが私と同じようなトラブルに遭遇することはないかもしれませんが、とにかく日本の不動産と同じ感覚で安易に投資しないようくれぐれもご注意ください。
もちろん、自分自身こういう経験が出来たことは今後の海外不動産投資に役立ってくることを心では願っています。

マレーシア不動産取得にあたっての留意点

次に、マレーシアでの不動産投資における留意点をまとめたいと思います。

  1. 物件選定
    クアラルンプールは、交通インフラが遅れており、朝夕の交通渋滞が激しく、地下鉄やモノレールなど公共交通機関が整備されている地域、あるいはその開発計画がある地域を優先すべきと思われます。
    車で通勤する必要がある場合は、有料高速道路に近いか地元の企業に勤務するローカルの方々が暮らせる地域を検討すべきです。
  2. 物件価格・賃料水準
    KLCCやブキットビンタンの中心部では、今や2,000リンギット/SQFを超える物件も少なくありません。
    しかしながら、新築コンドミニアムの供給過剰感もあり、テナントを探すことも容易ではなく、表面賃料利回りは4%前後とそれほど高くないため、今後の成長性が高く見込める場所や物件を慎重に見極める必要があります。
    モントキアラやアンパン、ダマンサラ/バンサーなどの郊外であればもう少し利回りが高くテナント付けも見込めるかと思います。
  3. 購入時・取得後の費用・税金
    1. 購入時
      売買契約書の印紙税・弁護士費用、ローン契約書の印紙税・弁護士費用、外国人州税 購入価格の3%程度
    2. 竣工後
      登記印紙税 購入価格の3%程度
      管理費・修繕積立金、電気・ガス・水道加入金、火災保険
      所得税(所得の26%)
      ローン利息(年4.2%変動)
    3. 売却時
      仲介手数料、弁護士費用、譲渡所得税(5年以内30%、5年超5%)
      ※費用にはマレーシアの消費税6%が課税されます。

3つの注意点と対策

上記の費用・税金の中で注意していただきたいのは、竣工・引渡し後2~3年経過した時期に請求される登記印紙税です。まとまった額の税金を支払うことになりますので、忘れた頃に届く請求書に正直びっくりします。忘れずにあらかじめ資金を手当てしておく必要があります。

次の注意は所得税申告です。マレーシア政府も最近は消費税を導入する等財政の立て直しに躍起になっていますので、くれぐれもご注意ください。また、日本や米国では幅広く認められている経費の範囲が限定的で、減価償却制度もないため、家賃から支払利息と管理費、保険料などを差し引いた金額の26%が納税額になりますので、ローン元本の返済が大きいと資金的にも大きな負担となります。
もちろん、日本で翌年の確定申告時に税額控除か費用計上が認められますが、一時的に資金負担が発生します。なお、納税事務は地元に住む日本人の会計士に委託しています。

最後に、HSBCでローンを借りる場合の留意点ですが、ローン口座から毎月元金と利息が引き落とされますが、事前に引き落とし口座に多めに返済金を入金すればその分支払利息が減ります。ローン金利が4.2%で、3カ月定期預金が3.2%程度ですので、余裕資金があれば、普通預金口座に入れずに、ローン返済口座か、定期預金を組めばその分お得になります。

ジョホール州のイスカンダール計画への投資

マレーシアでは、クアラルンプールの他に、ペナン島、ジョホール州における不動産投資が人気です。特に、ジョホール州にあるイスカンダール地区は、未開拓地を含め広大な地域に20年かけて300万人の新しい街を開発するという壮大な計画が国家プロジェクトとして進められています。

私の親しい友人が興味を持ち、いろいろ情報を提供してくれたこと、日本の大手総合商社が投資していること、シンガポールの対岸にあり香港に近い深蝨ウのような大都市に発展する可能性を秘めていることから、クアラルンプールと併行して、このイスカンダール地区への投資も検討していました。
クアラルンプールの物件のテナント契約がスタートし、コンドミニアムの現況を確認する目的も兼ねて、2013年7月にクアラルンプールに入る前にシンガポール経由でイスカンダール地区を視察しました。

シンガポールのマリーナベイ地区から地下鉄とバスを乗り継ぎマレーシアのジョホールバルの入国管理(CIQ)に抜け入国し、そこで日系不動産仲介業者の日本語が話せる現地スタッフと待ち合わせて、ダンガベイ地区の中国系コンドミニアムやヌサジャヤのプテリハーバー地区、経済特区のメディニ地区、教育地区のエデュシティ、遊園地のレゴランド、パインウッドスタジオ、キティランドなどを見て回りました。

主要道路が整備され、レジャー施設やホテルも徐々に建設されている感じはありましたが、ほとんどが建設中であり、ヨットハーバー周辺もまだまだ人はまばらでちょっと賑わいに欠ける寂しい街並みといった印象でした。
イスカンダール計画は沼地を一大都市に変貌させる野心的な国家プロジェクトであり、政府も相当の時間とコストをかけて開発を進めています。
また、シンガポールとクアラルンプール間に新幹線を走らせる計画も具体化しています。

シンガポールとマレーシアの政府系投資会社に加え、マレーシアの大手不動産開発会社であるサンウェイ社や日本の総合商社なども投資計画を発表し、徐々にオフィスや商業施設、居住環境も整備されていくと思いますが、人が賑わう街になるには計画よりも相当時間がかかるのではないかとみています。
2013年10月に私はプテリハーバー地区のヨットハーバーが眼前に見えるコンドミニアム(2016年完成予定)を購入しましたが、比較的安価な価格、海やヨットが見えるロケーションではあるものの、引き渡し後のテナント付、賃料水準、将来の売却計画については現状をよく調査し、街全体の成長ぶりを確認しながら長期的な視点に立って検討していく方針です。

既に海外不動産投資を経験している私にとってイスカンダール地区はアジアの国の方々の未来を映すエリアとみており、廃墟となる不安もある一方でそれ以上にアジアの豊かな時代の到来を予見させるものであると考えています。
ただし、イスカンダール地区で初めて海外不動産投資を検討される方は、クアラルンプールや他の地域との投資効果を比較し、開発物件の十分な調査と慎重な判断を行っていただきたいと思います。

第5回と第6回ではマレーシアの不動産市場状況と、私が新築コンドミニアムを購入した際の流れやトラブルについてお話いたしました。次回もよろしくお願いいたします。