第2回 国内不動産投資編

Know-how for the salaried worker

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こんにちは。サラリーマンと不動産投資家の両立を目指す早杉富士夫です。

前回、不動産投資を3つの視点(①インカムゲイン、②キャピタルゲイン、③タックスコントロール)からポートフォリオを組み立てていく私の投資方針についてお話しましたが、本日から数回に亘り私のこれまでの不動産投資ヒストリーについて書きたいと思います。

当初国内不動産しか視野に入れていませんでしたが、本格的に検討し始めた2011年当時は急速に円高が進んでいる時期でしたので、国内不動産に限らず、海外不動産も投資の検討対象に加えました。具体的に不動産投資の対象を整理してみると次のようになります。

投資の視点 期待効果 投資対象物件
①インカムゲイン 安定したキャッシュフローが期待できる不動産 首都圏1棟賃貸中古マンション
地方一括賃貸中古・新築マンション(社宅・寮)
②キャピタルゲイン 5年以内に売却益が期待できる不動産 都心の区分所有新築タワーマンション
東南アジアの区分所有新築コンドミニアム
③タックスコントロール 減価償却費が大きく利益圧縮効果が期待できる不動産 ハワイ・ニューヨーク等の築古区分所有コンドミニアム
都内の中古木造戸建住宅/アパート

国内は景気低迷を背景に投資利回りが相対的に高く、借入金利が低いため、インカムゲインが十分確保できる状況でした。
稼働率が安定している首都圏の利便性の高い地域に絞って候補物件を探しました。
築浅で満室時表面利回り10%以上がターゲットでした。

一方、海外は投資利回りが低く、借入金利が高いため、インカムゲインはあまり期待できないものの、マレーシアやフィリピンなどの東南アジアの新興国では経済発展、人口増加から数年後の高いキャピタルゲインが期待できました。
また都心や湾岸のタワーマンションも震災後あまり人気がなかったので割安感から将来のキャピタルゲインが狙えそうでした。
さらに、当時サラリーマンとしてそれなりの給与収入がありましたので、60歳以降給与収入が目減りするまでの間は所得税率があまり上がらない減価償却費が大きい築47年以上のハワイ・ニューヨークあたりのコンドミニアムもネット利回りで考えると投資冥利がありました。
国内の木造の戸建住宅/アパートも税務上償却年数が短いため同様の効果が期待できましたが、投資規模が小さく手間もかかるため平日会社で仕事をしないとならない立場にあるサラリーマンとしては最終的には投資対象からはずしました。

国内不動産については、私のメンターからいろいろな物件の紹介を受け、その都度一緒に物件を見て回り、良し悪しの見分け方や修繕費の見積もり方など様々なノウハウを教えてもらっていました。
幸運にも私のメンターは一級建築士の資格も持っていたため、大規模修繕計画の妥当性、耐震構造の強度、給排水設備の修理履歴確認、屋上の防水コートの必要性等、構造上の欠陥や共用部の修繕の必要性など素人では発見できない問題点を的確に指摘してくれました。
これは私にとって本当に心の支えとなりました。刺激を受けた私は不動産や建築について真剣に勉強する気持ちが湧き、書店にある関連本を50冊以上読み漁りました。

銀行や監査法人に勤務していたこともあり、損益計算書や貸借対照表は読めましたが、個別の減価償却や租税公課についてはいざ自分で経理処理してみるとわからないことだらけで自分の無知を嘆いたりしましたが、知識が統合されていくうちに、メンターのアドバイスの意図が少しずつ読み取れるようになり、自分でも徐々に自信が湧いてきました。
メンターと一緒に様々な物件を見て回る中で、地震に強い頑丈なRC造りの新築か中古マンション1棟に絞り、利回りが取れる物件に買付けを入れ始めました。
既に都心の優良な物件は価格が上がり始めており、希望価格に適わなかったり一番札に間に合わないことが続きましたが、数ヶ月後ようやく千葉市の中心地にある築浅の中古マンション一棟を購入することができました。
実はこの物件は都内でない上に私の想定予算よりも高く正直購入を躊躇したのですが、メンターの「小さい物件も大きい物件もリスクは変わらない。この物件はリーマンショック前に新興不動産会社がコストをかけて建設しておりメンテナンスや客付けに優れるので早杉さんにはお勧め」の一言が決め手となり決心がつきました。

すぐに資産管理法人の設立手続きを行い、定款、印鑑を作って公証役場に持ち込み、銀行には詳細な投資計画書を作ってフルローンを申し込みました。
事前にメンターが私の属性や物件の概要を銀行に説明しており、それまでに仮承認をとっていてくれましたので、すばやく正式承認が下りました。
さらに、売主との売買契約においても重要説明事項の記載にあたってメンターが細かい瑕疵担保条項や付帯条件をいろいろ盛り込んでくれました。
ついに私は12階建て一棟中古マンションのオーナーになり、サラリーマン兼業不動産投資家の一歩を踏み出しました。

参考までに、このマンションですが、3年半経過した現在、以下のようなキャッシュフローとなっています。

千葉市中古マンション42戸(年間平均稼働率93%)

売上高 満室時の年間賃料収入
(100とした場合)
内訳
元利返済 ▲48.3 銀行借入
業務委託費 ▲6.9 建物管理費
広告宣伝費 ▲4.5 補修費
修繕費 ▲0.5 補修など
水道光熱費 ▲1.5 電気・水道
租税公課 ▲5.0 固定資産税
損害保険 ▲0.8 地震火災保険
差引 32.6 実際は25

投資シミュレーション(サンプル)

  • 早杉富士夫の作成した投資シミュレーション表です。前提条件は築4年のRC造12戸ファミリーマンションを当初預金残高800万円、敷金100万円から運用を始めるものとします。法人決算は12月です。2014年5月25日時点から始めて、2017年1月25日時点で税引き後累積資金収支が黒字化します。そして、2018年8月25日時点で預金残高が1100万円を超える計算となります。

投資効果の評価指標(サンプル)

  • 投資効果の評価指標一覧です。購入時評価は早杉富士夫が千葉市の中古マンションを購入した際の数字です。GCRは「表面利回り」のことで、計算式は「年間総収入÷購入価格」、購入時評価は「10.16%」でした。NOIは営業収支のことで、計算式は「年間総収入-(減価償却費、支払利息、修繕費を除いた営業費用)」、購入時評価は「7,752,019円」でした。FCRは「実質利回り」のことで、計算式は「NOI÷(購入価格+購入時諸費用)」、購入時評価は「6.02%」でした。CCRは「自己資金利回り」のことで、計算式は「税引き後キャッシュフロー÷自己資金」、購入時評価は「11.25%」でした。DSCRは「債務返済余裕率」のことで、計算式は「NOI÷年間総返済額」、購入時評価は「1.75」でした。BERは「損益分岐入居率」のことで、計算式は「1-(営業費用+年間総返済額)÷年間総収入」、購入時評価は「71.1%」でした。LTVは「ローン資産価値比率」のことで、計算式は「ローン借入額÷物件価格あるいは評価額」、購入時評価は「83.3%」でした。NPVは「正味現在価値」のことで、計算式は「各年度の税引き後キャッシュフローの現在価値の総和-自己資金」、購入時評価は「4,107,333円」でした。IRRは「内部収益率」のことで、計算式は「各年度の税引き後キャッシュフローの現在価値の総和/自己資金」で、購入時評価は「5.72%」でした。

このように、最初の投資物件は、幸運にも、実質利回りが高く、安定したキャッシュフローを確保しています。
但し、テナントの出入りが激しく仲介業者への仲介手数料や広告費などのインセンティブが不可欠なため、想定以上にキャッシュアウトが多く、将来の稼働率の維持も大きな課題といえます。
資金計画を立てる場合は、元利金返済を除くキャッシュアウト比率は余裕を見て概ね家賃収入の20%~25%程度を見積もっておく必要があるでしょう。

千葉市のマンション購入後、メンターとも相談のうえ、今度は長期に亘り安定稼動が期待できる物件を取得することを目的に、地方で病院関係者用の独身寮を探すことにしました。
最初に話が持ち込まれた静岡県にある総合病院の単身寮建設案件は途中で病院側から契約条件の変更提案があってこれに同意しなかったことから最終的に流れてしまいました。
メンターから「全国的に病院の社宅・寮や介護施設のニーズは強く、まだまだチャンスがあるから気長に探そう」と慰めてくれましたが、1年後本当にそのチャンスが訪れました。
今度は神奈川県内にある有数の総合病院が医者・看護士用に一括借り上げしている中古マンションでしたが、大きな問題がありました。
借地権付き建物だったのです。地主は有名な大手不動産会社でしたので信用面での心配はありませんでしたが、一般に借地は銀行の評価が厳しくフルローンを希望する私にとって最大の難関と感じていました。
案の定、複数の銀行から期待した条件が出ず、暗礁に乗り上げかけたのですが、運よく千葉市のマンションに融資してくれた銀行からフルローンの承諾が得られ、無事購入することができました。
借地案件は、地主に対して、抵当権設定承諾料、名義書換承諾料、借地更新承諾料などを支払う必要があるため、借地期間にもよりますが、これらの費用を売買契約金額の3.5%程度は見込んでおく必要がありますので、フルローンを希望する場合はこれらの費用も融資対象となるか否か事前に銀行に確認しておくことを忘れずに投資計画を検証することがポイントです。
いずれにしても、土地賃貸借契約の条項並びに税務上の取り扱いについては、不動産の専門家でもよくわからない事項が少なくありませんので、事前に弁護士や税理士に相談することをお勧めします。
想定していなかった費用が後から判明するようでは投資として危険です。

この一括借り上げの借地物件は、キャッシュフローとしては極めて効率が良く、家賃・駐車場収入100に対して、地代、建物管理費、光熱費、元利返済、公租公課を差し引いた手残りが40と千葉市のマンションよりもインカムゲインが得られています。
ただし、10年間の一括借り上げの更新時に賃料が下がるリスクが高いため、大規模修繕・リフォーム資金の確保、余剰資金の再投資など様々な対策を講じる必要があります。

納得できる案件がくるまでは待つことを覚悟すること、様々な案件を一つ一つ検討する手間を惜しまないことが重要だということをこの単身寮案件を通してで改めて認識できました。

購入した物件の写真

  • 早坂富士夫が購入した千葉市の中古マンションです。赤い外壁と丸い外階段が特徴的な造りです。