第8回「投資理論と投資哲学③ ~実需の不動産購入と海外不動産投資~」

Actual demand of real estate

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同じ不動産の購入であっても、「投資不動産の購入」と「実需での不動産購入」は全くその性質が異なります。
ここで「実需での不動産購入」とは、実際に自分で利用する不動産の購入、例えば、自宅の購入や別荘の購入等を意味します。

実需の不動産投資の考え方

自宅を建築するために1坪100万円で50坪の土地を購入したとします。
購入代金は、5,000万円です。この土地に建物を建築して、自宅として永続的に土地を利用するとしましょう。

この場合、この土地の単価が1坪120万円に上昇したとしても、それに伴う経済的な利益はありません。
1坪120万円で50坪持っていますから、資産は6,000万円に増えたことになりますので、これを売却すれば土地代金6,000万円が手元に入ってきます。
しかし、同時に周辺の地価も20%くらいは上昇しているでしょうから、6,000万円で購入できる土地は、売却した土地と同等のものにしかなりません。
不動産取引には費用がかかりますから、買い替えても特段、経済的な利益を得る訳ではありません。
むしろ、固定資産税も増えるでしょうから、経済的には不利益になる可能性が高いと言えます。

一方、値下がりしても経済的に大きなダメージになるわけでもありません。
すなわち、周辺の地価も下がっているでしょうから、買い替えるとしても、概ね同様の土地が手に入るからです。
もちろん、不動産取引に費用はかかりますので、何か特別な理由がなければ買換えは行わないでしょう。

このように、実需で購入した不動産が値上がりしても、値下がりしても、実際に利用を続ける限りにおいては、経済的にはほとんどメリットもデメリットもありません。
自分の購入した土地が値上がっていると得したような気にはなりますが、実需である限り、単に「得したような気になる」だけです。
つまり、実需というのは「本人が満足していれば良い買い物」であり、値上がりや値下がりは気にする必要がありません。

一方、投資で購入した不動産が値上がりした場合、実需での購入とは異なりますので、一応は、経済的な利益を得ることができます。
5,000万円で購入した土地が6,000万円で売却できれば、1,000万円の利益を得たことになります。
ここで、「一応は」と付け加えたのは、6,000万円で売却できた土地の周辺地は、やはり、20%くらいは地価が上昇していると思われますので、その6,000万円で新たな土地を購入しても、以前持っていた土地と同程度のものしか購入できません。

海外不動産投資のうま味

ここに海外投資のうま味があることに気付いたと思います。
失われた20年と言われるように、過去20年くらいは日本の物価は上がっていませんでした。
一方、マレーシアでは、過去5年くらいで見ますと、毎年7%くらいは不動産価格が上昇していました。
従いまして、マレーシアなどの海外で投資して利益を得た場合は、本当の意味で経済的利益を得ていることになります。

お分かりのように、日本国内を生活の拠点とする方は、自分の購入した国内物件が、周辺地域に比べて値上がりが大きければ経済的利益を得ていることになりますが、そうでない限り、国内での投資でのうま味はあまりありません。
ここが株式投資と不動産投資の大きな違いでもあります。株式投資の場合、自分が購入した銘柄の株価だけが大きく上昇することがあります。
それを売却すれば、大きな経済的利益が得られますが、不動産投資はこのようにはなりません。
自分の購入した土地だけが大きく値上がりして、隣地は値上がりしないというようなことは滅多に起こりません。

バブルの時代に不動産投資で大儲けした人たちは、①物価上昇率よりも不動産価格の上昇率の方が大きかったので、そのギャップから利益を得た、②購入不動産から得た賃貸料収入で資産(不動産)を増やしていったこと等によります。
日本のように安定成長に入った国を生活の拠点としている場合、より成長性の高いアジア諸国等での不動産投資は、資産の拡大あるいは利益の確保に役立ちますが、日本で不動産投資を行うことでこれらを実現するのは難しくなっています。