第7回「投資理論と投資哲学② ~分散投資の考え方~」

Diversified investment

Share Button

分散投資の考え方

「すべての卵を一つの籠に盛るな」という有名な投資の格言があります。
これは直感的に分かりますね。
例えば、全財産を一つの上場会社の株式に投資していて、その会社の経営が破たんすれば、投資家は多大な影響を被ることになります。
リスクを集中させると、リスクが顕在化した瞬間に、すべての財産を失うことになり兼ねません。

分散投資に関して興味のある人は「現代ポートフォリオ理論」などを勉強されれば良いと思いますが、ここは学術的な説明を行う場ではありませんので、正確ではありませんが、分散投資を理解して頂くための簡便な説明を行います。

ある投資家が5つの不動産を保有しているとします。
仮に、すべての不動産を東北地方に保有していて、地震によってすべてが崩壊してしまったら、前述の株式投資と同じような結果になります。
そこで、5つの不動産を札幌・仙台・東京・大阪・博多と5か所に保有していれば、地震によって仙台の不動産に被害が出ても他の不動産には被害がありませんので、すべての財産を失うようなことはありません。

しかしながら、もう少し大きな視点で見ると、これら5つの不動産はすべて日本に所在しています。
そのため、日本全体に影響するリスクが顕在化すると、保有財産は大きな影響を受けます。
そこで、東京の不動産保有は継続して、他は売却して海外不動産に投資することを検討してみましょう。

海外で分散投資をする

最近は、マレーシア不動産がブームであり、継続的に不動産価格も値上がりしており、他の国に比べて高いリターンが期待できそうだと考えて、マレーシアのクアラルンプールに4つの不動産を購入することを検討してみましょう。
確かに、マレーシアの不動産から得られるリターンは他の国より高いかもしれません。

しかしながら、リターンが高いからと言って、不動産をマレーシアに4つ買った後に、マレーシアに影響するリスクが顕在化したとします。
そうなると、マレーシアに集中して投資した影響が出てしまいます。そこで、マレーシア・タイ・ニュージーランド・カナダにそれぞれ1つずつ、合計4つの不動産を購入するとします。
この場合、投資している通貨も自動的に、円・マレーシアリンギット・タイバーツ・ニュージランドドル・カナダドルという5つの通貨に分散投資されることになります。

すなわち、海外不動産投資は、地域の分散だけでなく、通貨分散も同時に行うことになります。
また、国によって経済構造がそれぞれ違います。
タイは自動車産業のサプライチェーンとして有名ですが、ニュージーランドは第一次産業(酪農など)が経済をささえており、経済構造が大きく異なります。
従いまして、ある一つの事象が同時に両国に影響する可能性が低くなります。

つまり、海外投資でマレーシアが良さそうだからと言って、マレーシアに集中投資するのではなく、さまざまな国に投資することによって、分散の効果が享受できることになります。