ドナルド・トランプ大統領と英国における不動産投資への影響

Impact on President Donald Trumph and real estate investment in the UK

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今回は大方の世論調査の結果に反してアメリカの次期大統領に選ばれたドナルド・トランプ氏の英国における不動産投資に関して述べてみたい。
昨年は英国のEU離脱を問う国民投票でもマスコミの予想に反して残留ではなく離脱派が勝利した。
アメリカの大統領選挙に関しては、始まった当初は共和党の泡沫候補と呼ばれたトランプ氏の政策、アメリカンファーストが徐々に国民の間に浸透していき、アメリカのエスタブリッシュ層の支持を受けていて当選確実と思われた民主党のヒラリー・クリントン候補が僅差で敗れ、初の女性大統領の夢を逃した。

私は、夏頃にサンデー・タイムズ紙のトランプファミリーに関する記事を読んで、彼は外では非常に派手で言動には過激な言い方が多いが、家庭ではストイックで真面目な父親のようだと感じた。富豪の子供達によくあるように、ドラッグに手を出したり、アルコール依存症になったりと放漫な生活を送ったりすることはなく、それぞれ有名大学を卒業して普通のビジネスマンになっているようである。トランプ氏も愛読書として聖書を選んでいるのが意外であった。

彼の祖父のフレッド・トランプはドイツ人で、祖母メアリー・アンはスコットランド西部のルイス島からの移民としてアメリカに来た。1946年にニューヨークの不動産開発業者フレッド・トランプの子として生まれた。そして1966年に"ペンシルベニア大学の不動産科に移り、1968年に卒業し、父親が経営する不動産投資会社エリザベス・トランプ&サンに入社した。1970年代からは父とともにオフィスビルや高級ホテルの開発、カジノの経営に乗り出し、1980年代にはアメリカの不動産王と呼ばれるように事業を拡大した。その中ではニューヨークの5番街にある「トランプタワー」が有名である。

しかし、1990年代に入ると英国、日本、アメリカと世界的に不動産バブルが崩壊し始め、巨額債務を抱え、1991~1994年にはカジノや高級ホテルが倒産。1990年代半ばには事業が破産状況に陥った。
1990年代後半からはアメリカも英国と同じように景気が良くなり、再度アメリカの不動産王と呼ばれるようになり、フォーブス誌が選ぶアメリカのトップ企業経営者ベスト400社の中に入った。

2007年のサブプライムローン問題、2008年9月のリーマンショックと、再び世界的に経済不況が発生。その影響で「トランプ・プラザ」、「トランプ・マリーナ」、「トランプ・タージマハル」を運営するトランプ・エンターテイメント・リゾーツ社は2009年に連邦倒産法の申請をしている。これが6回目の倒産危機である。

彼はこの間、3度の結婚、不動産投資事業の6度の経営危機と、厳しい経済環境を切り抜いてきた強い不屈の意志を持つ人のようである。

ロンドンのシティに2010年に一番の超高級マンションヘロン・タワーを建設したヘロン・インターナショナルの経営者でロンドンの不動産王と呼ばれたジェラルド・ロンソン氏とも親しいようだ。

今年の6月下旬にはスコットランドのアバディーンの北東部にある高級ゴルフリゾート「トランプ・インターナショナル・ゴルフ・リンクス」を訪れ、英国のマスコミでも話題になった。

トランプ氏は次期大統領に選ばれると重要なポストに彼の政策に共鳴する人やウォール街の金融のプロなどを入れ、国内のインフラ投資や大型所得や法人税の減税、規制緩和政策などを打ち出し、その結果、予想に反し、株高、円安が進んだトランプバブルが起きている。彼は不動産投資のプロであることから、強いアメリカを作っていくように思える。

初掲載:
2017年1月2日「週刊住宅新聞」