スイスの不動産取得に関する"コラー法"とは?

What is "Lex Koller" in Switzerland?

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スイスの不動産取得に関する

スイスにおける外国人(注:外国人の定義は後述)による不動産の取得に関するスイス連邦法(いわゆるコラー法:Lex Koller)では、外国人によるスイスの居住用およびその他の非商業用不動産の取得を制限しています。
1983年の法の設立以降(同様の法律は1960年代から存在)、コラー法はいくつかの面では自由化されてきました。
しかし、近年ではこのコラー法が全面的に廃止されるべきか、それとも、もっと厳格化されるべきかについて、大きく議論されています。

"コラー法"とは?

古くは1961年に制定された、外国人によるスイスの不動産購入を規制する連邦法のこと。外国資本によるスキーリゾートなどの乱開発、自然破壊、リゾート地の不動産価格高騰を避けるために設けられました。
これまでに何度も内容が修正されており、2017年現在では、外国人は主にアルプスに隣接する地域と、レマン周辺の特定のリゾート地に指定されている別荘のみ、取得することができます。
商業用の不動産に関しては外国人が取得する場合でもコラー法の制限を受けないものの、居住用不動産に関しては厳しく制限がされている状態です。

コラー法に関する議論

スイス政府は、2007年7月4日の報告書でスイスの議会にコラー法を完全に廃止するよう勧告していましたが、2013年11月13日にはコラー法を維持するための追加の報告書を発表しました。
議題は、2013年9月に、コラー法を引き締めることを目的としたスイス議会(Swiss National Council)のメンバーであるJacqueline Badranによって提出されました。

第1の議題は、再びコラー法の商業不動産への適用を目的とすること、第2の議題は、スイス人以外の人がスイスの不動産ファンドや上場不動産会社に参加へ禁止することでした。両議題は2014年6月にスイス連邦議会によって一度、棄却が本決まりになったにも関わらず、2015年4月にスイス連邦議会は、コラー法を改訂して、より厳しくする意向を発表しました。協議期間は数回延期され、今のところ2016年12月に開始され、2017年5月まで継続される予定です。しかし、いつのどの時点でスイス議会で本格的に議論されるのかは不明ですが、2018年までには行われることになっています。

2015年4月のスイス連邦議会のコラー法の厳格化の意向が発表されたあと、(わずか数カ月前に行われたスイス連邦議会では修正を決定することを目指すように思われましたが)、スイス連邦議会は、Jacqueline Badranの議題(2番目の議題の例外-スイス人以外の人がスイス不動産の集合投資スキームに投資することを禁止し、スイスの不動産ファンドには適用されず、上場不動産会社のみに適用される)の実行を提案するだけでなく、 コラー法の施行をより強化し、非EUおよび非EFTAの人が国を去る時にはスイスの不動産を売却する義務を導入し、スイスの地方自治体や州にはコラー法に関する法的適格性をスイス連邦に移転するよう促しました。

しかしながら、スイス連邦理事会は現在、状況を見極めるために、少し時間をかけて再検討しているようです。コラー法の将来に関する議論は今後も続いていくと考えられます。

時間の経過に伴うコラー法の自由化

1983年の法の設立以降、外国人にスイスの不動産投資の許可するために、コラー法はいくつかの段階で自由化されています。

1997年

スイスの商業用不動産マーケット(住宅ローン融資・マーケットを含む)が外国人投資家に開かれました。
商業活動が行われている不動産は、2017年現在、コラー法の許可要件から除外されています。
これは、不動産がその海外投資家によって直接使用されていようとなかろうと、または海外投資家によって純粋に投資目的(第三者が商業目的で賃貸された不動産を使用する場合)で第三者に賃貸されていようとなかろうと、許可が除外されます。

2002年

EUとのスイスの二国間協定により、スイスに永住権を持つEU / EFTAの国民はスイスの国民のように扱われるとの原則が導入されました。

2005年~

スイス証券取引所に上場している不動産投資法人の株式は、外国人投資家が無許可で購入することができます。
しかし、そのような投資法人が外国人に支配されているものであれば、新しい居住用不動産の取得に際し、依然として許可が必要となります。

上記のことから、外国人による事業用不動産の取得は、原則、コラー法に制限されません。 しかしそれとは対照的に、居住用不動産の方は依然として厳しく制限されています。

取引のためのコラー法の意義

コラー法は、不動産取引と株式取引の両方に適用されます。つまり、取引が以下のような形式であるかどうかは関係ありません。

  • 直販/買収
  • 不動産を保有する事業体の株式を取得することによる、間接的な取得
  • 不動産の交換
  • 贈与
  • 事業の資産または負債の取得、または既存の事業体の合併、分割、資産移転などによる再編

不動産と株式の取引では、コラー法の適用内の取引は、コラー法の許可が与えられた後でのみ有効になります。

※もし、このような取引が許可申請をせずに、もしくは、許可が下りる前に取引が完了した場合、その取引は無効となります。

※既に契約が履行されている範囲で、当事者は支払いを取り消すことができます。

※当局は、不動産登記を取り消すことにより、または買い手に強制的に不動産を売却させることにより、違法な状態を正す必要があります。

実際には、取引の当事者たちはその取引がコラー法の対象であるかどうかを、判断できない場合があります。このような場合、買い手は取引に入る前に管轄当局と判決の請求をしなければなりません。

以下のコラー法の要約では、特定の場合や特定の適切な取引の形式を見つけることで、取引が可能かどうかを判断できる可能性があることを強調しています。

コラー法の規則が適用される場合

不動産取引が下記の両方に該当する場合はコラー法が適用されます。

  • 購入者(または取得企業のオーナー)が、コラー法の意味での外国人である。
  • 購入の対象が、コラー法での“不動産”としてのその使用用途(非営利目的)と、取得する権利(取引)の両方に該当する。

"外国人"とは

個人について:コラー法では、外国の個人を以下のいずれかと定義しています。

  • 居住者または海外に住む個人。
  • スイスに一時的な居住者として居住しており、EU / EFTA加盟国の国民でもなく、有効な永住許可証の所有者でもない(許可C)。

法人について:次のいずれかの場合、法人も外国人と見なされます。

  • 本拠地が海外にある。(外国人によって経営・支配されているかどうかに関わらず。)
  • 外国人によって経営・支配されている場合。

コラー法の対象となる不動産

非商業目的

コラー法は、その不動産が経済活動ための恒久的な事業所として機能しない限り、外国人がスイスの不動産を取得する際には関係当局から許可を得ることを要求しています。 コラー法での経済活動とは、工業生産、貿易またはサービス業が含まれます。

例外

恒久的な事業所に関連する不動産は、例外として、居住用不動産を含めることができます。

例:

  • グループホームのような要介護者のフラット(集合住宅)などの事業で、居住用不動産が必要な場合。
  • 事業と切り離す事が不可能、または不合理な場合。
  • 都市計画や建築規則の下で、居住用不動産が部屋の割当に必須な場合。

非商業目的

しかし、居住用不動産の単なる建設や、売却、賃貸では、コラー法の意味での経済活動の対象とはなりません。

さらに:

  • 外国人は、保留地が不動産面積の3分の1を超えていない限り、許可なく土地の保留地付きの商業用不動産を購入することができます。
  • 開発目的の土地は、経済活動目的の建物工事で、約1年以内に始業されるならば、海外の人でも取得することができます。
  • 海外の人でも、取得したい居住用不動産の価値が、会社の資産全体の30%未満であれば、居住用不動産の買収や保有、販売を主たる目的としない企業との合弁により、又は買収により、居住用不動産を手に入れることができます。

上記で述べたように、商業用不動産として適格ではない不動産は、他の免除の適用がない限り、許可の対象となります。
居住用不動産を取得するための許可は、別荘やサービスアパートメントの取得に適用されます。
このような不動産は、州や地方自治体によって休暇用のリゾート目的地と指定された地域(例:アンデルマットなど)に存在しなければなりません。
また、州や地方自治体では、独自の制限をコラー法について設定することができます。

例えば:

  • 特定の地域では許可を禁止する。
  • コンドミニアムのみ、もしくはコンドミニアムの一定の割合までの許可。
  • 年間許可数の制限。
  • 既に外資である居住用不動産のみ購入許可。

コラー法の対象となる不動産取引

不動産の直接購入に加え、コラー法は外国人が不動産を事実上支配する取引にも適用されます。

  • 借地権
  • 購入権の付与および行使
  • 最初の拒否権または買戻し権
  • 融資の付与

したがって、「不動産の取得」という用語には、以下の方法による取得も含まれます。

  • 共同オーナーシップまたは共同所有(コンドミニアムの所有権を含む)。
  • 不動産の借地権、占有権または使用権
  • 法人主体の株の取得(議決権なしの株式を含む)、法人格を持たない企業の利権の取得(パートナーシップなど)、事実上不動産の取得が目的である投資手段の取得(投資ファンドを含む)は、すべて"不動産の取得"という扱い。
  • しかし、スイスの取引所に上場している株式や、定期的に取引されている投資信託を購入する場合、例えそれが取引所外の取引でも、コラー法の承認を得る義務はありません。
    したがって、独占的に、または実質的に居住用不動産の取得または保有に関与する非上場企業の単元株式の購入は、コラー法による事前許可が必要となります。
    また、通常でない契約条件の長い賃貸は、コラー法の許可要件の対象となることもあります。

    例えば:

    • 賃料の一括前払い、もしくは基礎的な建築変更に同意しない。
    • 賃貸契約とローン契約を関連付け、ローンの利息を賃料で相殺すること。
    • スイス銀行が適用する、通常の貸付限度を超えた不動産の開発や購入に掛かる融資。
    • 建設禁止および隣接土地に対する同様の所有権の制限。

コラー法とは:まとめ

この記事では、コラー法について詳細にご紹介しました!

  • コラー法とは、外国人によるスイスの不動産購入を規制する連邦法のこと。
  • 2017年現在、コラー法に制限されないのは事業用不動産の取得のみ。
  • 2017年現在、居住用不動産については制限があり、外国人は実質的にアルプスに隣接する地域と、レマン周辺の特定のリゾート地に指定されている別荘のみ取得することができる。
この記事は、以下の情報を和訳して掲載しています:
The Swiss Lex Koller before its next revision?

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